デスクワーク漬けの体を変える:通勤ウォーキング・ランニングで得た心身の余裕
「運動はしたいけれど、時間がない」。日々の業務に追われる中で、そう感じている方は少なくないのではないでしょうか。今回は、多忙な管理職として働く中で体力の衰えを感じ、健康への不安を抱えていた佐藤さん(40代後半)が、通勤時間を活用した運動でどのように心身の変化を遂げたのか、その実体験をお話しいただきます。
導入:運動を始める前の状況と課題
佐藤さんは、IT企業の管理職として長年勤務されています。運動を始める前は、長時間にわたるデスクワークが常態化し、通勤も電車とバスを利用していたため、一日の大半を座って過ごす生活が続いていました。
「当時は、慢性的な肩こりや腰痛に悩まされ、階段を上るだけでも息切れするほど体力は落ちていました。健康診断の結果も年々悪化し、特に内臓脂肪の増加やコレステロール値の高さが気になっていました。仕事のストレスも重なり、夜はなかなか寝付けず、朝もすっきりと起きられない日が多く、常に疲労感を抱えていたように思います。このままではいけない、という危機感は常にありましたね。」
運動の必要性は感じつつも、仕事が終わるのは夜遅く、休日は家族との時間を優先したい。ジムに通う時間も、運動のための特別な時間を確保するのも難しいと感じていたそうです。
運動開始のきっかけ:日常の中に潜む「空白の時間」に注目
佐藤さんが運動を始めるきっかけとなったのは、ある健康診断での医師の言葉でした。
「医師から、『このままでは将来的に大きな病気のリスクが高まる』と具体的に指摘され、改めて運動の習慣化を勧められました。その時、ふと『通勤時間』が頭をよぎったのです。片道1時間ほどの通勤のうち、電車を降りてから会社までのバス移動を、歩きに切り替えてみたらどうだろう、と。」
佐藤さんはまず、片道約30分のバス区間をウォーキングに置き換えることから始めました。特別に時間を捻出するのではなく、日常の移動時間を運動に充てるという発想が、忙しい佐藤さんの背中を押したと言います。
運動内容と継続の工夫:無理なく、少しずつステップアップ
佐藤さんが最初に取り組んだのは、毎日の「通勤ウォーキング」でした。
「最初は週に3回から始めました。スーツに革靴という格好なので、無理せずゆっくりと、景色を楽しみながら歩くように心がけました。約30分のウォーキングでしたが、普段使わない筋肉を使っている感覚があり、少しずつ汗ばむようになりました。」
慣れてきたところで、スニーカーに履き替えて通勤し、途中からランニングを取り入れる「通勤ランニング」へと移行しました。
「会社にロッカーがあったので、着替えを用意して、週に2〜3回、片道40分ほどかけてウォーキングとランニングを組み合わせるようになりました。無理なく続けるために工夫したことはいくつかあります。一つは、早起きして少し余裕を持たせること。もう一つは、スマートフォンにランニングアプリを入れて、距離や時間を記録することです。数字で可視化されることで、達成感が得られ、モチベーション維持に繋がりました。また、好きなポッドキャストを聴きながら走ることで、飽きずに楽しむことができました。」
継続が難しかった時期についても伺いました。
「雨の日や、仕事で特に疲れている日は、『今日はやめておこうか』と思うこともありました。そんな時は無理せず、休む日と割り切るか、あるいは距離を短くする、ウォーキングだけに切り替えるなど、柔軟に対応するようにしました。完璧を目指さず、『継続することが大切だ』と自分に言い聞かせていましたね。また、体が重く感じても、走り出した後に感じる爽快感を思い出し、『とりあえず玄関を出てみよう』と一歩を踏み出すようにしていました。」
運動による具体的な変化:心身に訪れた好循環
通勤運動を始めて半年が経つ頃には、佐藤さんの心身に多くの変化が現れ始めたそうです。
「まず、最も顕著だったのは体力の向上です。以前は息切れしていた階段も楽に上れるようになり、一日中座っていても夕方まで集中力が持続するようになりました。体重も徐々に減少し、内臓脂肪の数値も改善傾向にあります。健康診断の結果も、以前より安心できる内容になってきました。」
精神面にも大きな変化がありました。
「運動後は頭がすっきりとし、仕事のストレスが軽減されるのを実感しています。イライラすることが減り、冷静に物事を判断できるようになりました。以前は抱え込んでいた悩みも、『まあ、なんとかなるだろう』と前向きに捉えられるようになったのは、運動による心の余裕が大きいと感じています。夜も寝つきが良くなり、朝までぐっすり眠れるようになったことで、目覚めも格段に良くなりました。睡眠の質の向上は、日中の仕事の効率にも直結していると感じています。同僚からも、『最近、顔色が良くなったね』『明るくなったね』と言われることが増え、人間関係もより円滑になったように感じます。」
さらに、仕事への影響についても語ってくださいました。
「運動によって集中力が高まり、午前中の早い時間からパフォーマンスを発揮できるようになりました。仕事の段取りもスムーズになり、以前よりも効率的に業務をこなせるようになったことで、残業時間も少しずつ減らせています。運動は、健康だけでなく、仕事の生産性向上にも繋がるのだと実感しました。」
読者へのメッセージ:小さな一歩から、新しい自分へ
佐藤さんの体験は、忙しい中でも運動習慣を築き、心身の変化を実感できる可能性を示しています。
「私のように運動から遠ざかっていた人間でも、通勤という日常の延長線上で運動を取り入れることで、無理なく継続することができました。大切なのは、最初から完璧を目指さないことだと思います。まずは週に1回、10分でも良いので、できそうなことから始めてみる。その小さな一歩が、いずれ大きな変化となって自分に返ってきます。」
運動は、単に体を鍛えるだけでなく、日々の生活に「余裕」と「活力」をもたらしてくれると佐藤さんは言います。健康や日々のパフォーマンスに不安を感じている方は、ぜひ佐藤さんのように、ご自身の生活の中で「運動に変わりそうな空白の時間」を見つけて、新しい一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。その一歩が、きっとあなたの人生をより豊かなものへと導いてくれるはずです。